海外旅行前に知っておきたい医療情報

途上国は国内よりも感染リスクが高まるので、ワクチンの予防接種が大切です

海外では肝炎や狂犬病が多い

衛生状態が日本に比べてまだまだ整備されているとはいえない途上国での生活は、感染症罹患のリスクが高く、A型肝炎や腸チフスなど国内では既に制御された病気が未だに猛威を振るっている地域は多く存在してます。また熱帯病など地域特有の疾患もあり、これらに初めて出会う日本人は抵抗力がありません。

途上国で流行している感染症のなかには、渡航前のワクチン接種により予防が可能な病気が数多くあります。医療設備や言葉の異なる外国で病気にかかって苦労するよりも、ワクチンによる予防を心掛けたいものです。

旅行先の国によって、流行する病気にも特徴があります。厚生労働省検疫所のホームページでは、勧められるワクチンの一覧表が掲載されており、参考になります。

また海外での生活様式によっても、感染症のリスクは異なります。例えばフィリピンに旅行するに際して、マニラなどの大都市での国際会議に出席するのと、リュック一つ背負って小さな島々からなる地域を巡る旅とでは、リスクには雲泥の差があるでしょう。

先進国に滞在する場合にも、予防接種が必要とされることがあります。海外への留学、現地への学校入学・編入の条件として、予め定められたワクチンを完了していることが要求されます。例えば日本で全ての定期接種を終えた子供がアメリカの小学校へ編入するに際しては、B型肝炎や水痘・ムンプスなど日本では定期接種として扱われていない予防接種も済ませることが要求されます。

さらに、DPTやポリオなど接種回数が日本の規定では諸外国に対して少ないものは、追加接種が求められます。髄膜炎菌ワクチンなど日本では入手できないワクチンを接種済みであることが大学留学の条件であることもあります。

ある病気に対する1種類の予防接種でも、免疫をつけるためには複数回の接種が必要となるワクチンは意外と多いものです。A型肝炎、B型肝炎、狂犬病など私たちが以前に摂取歴のない不活化ワクチンのほとんどは、複数回接種が必要です。

同一ワクチンの接種期間は、規定によって何日以上開けないと駄目だという決められています。異なる病気に対する数種類のワクチンを同時に接種することは勿論可能ですが、別の日に接種する場合はほかのワクチンとの間隔は何日以上ということも規定されています。

したがって、海外特に途上国へ旅行することが決まったら、なるべく早い時期に予防接種機関や検疫所でワクチンの種類とスケジュールについて相談するようにしましょう。出発前はほかにやることが色々あるはずなので、余裕を持って早めに準備しましょう。

持病のある方は出発前に病院で検査を受け、英文の医療情報を用意しましょう

脳ドックなどを活用

長期の海外赴任、留学、ロングステイなどは勿論、海外旅行や出張に際しても、持病がある方は、出発前に健康状態に関する検査を受けておくのが安心です。

冠動脈の狭窄などでステントの入っている人は、心臓・冠動脈CT、脳卒中後の人は、頭部CTやMRI、糖尿病の人は血糖値の検査、不整脈のある方は24時間に渡って心臓の動きを記録するホルター心電図などで、抱えている病気がコントロールできているかどうかをチェックしましょう。

もしもコントロールできていないなら、旅行や出張をキャンセルあるいは延期する勇気も必要です。そもそも不安を抱えての旅行は、心底楽しめませんし、海外で入院となったら大変です。原則として、持病の悪化は、海外旅行保険の対象外です。

海外での日本人の死亡の60〜65%は病死で、その内訳は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)と心筋梗塞です。@虚血性心疾患や脳卒中の既往歴のある人、Aそれらの危険因子となる糖尿病、高血圧、高脂血症が該当する人、B高所トレッキングやダイビングツアーに参加する中高年旅行者、C劣悪な医療環境の地域へ赴任する人などは脳ドックや心臓ドックを受け、安心して旅行、出張、海外赴任、そしてロングステイ等に臨みましょう。

自身がインスリンを使用中、ペースメーカ患者、心臓バイパス術後、重症薬剤アレルギーなどを持っている場合は、英文のアラートカード(自身の命に関わる重要な医療情報を記載したもの)として、財布などに入れて、常に携帯するようにしましょう。

そして、自分の病気に関しては、旅行用英文診断書か安全カルテのどちらかを用意しましょう。前者は、オーダーメイドですから、きめ細かな医療情報を現地の医師に提供できますが、多忙な医師の手を煩わせるため費用がかかります。

一方、安全カルテは、冊子ということで少しかさばりますが、ほとんどの病気をカバーしており自分で記入し、最後は主治医にチェックしてもらってサインをしてもらうので経済的に作成できます。

いずれにせよ、「命を守る書類」となるわけですから、実際に役に立たないもの、例えば、病名と薬しか記入していない英文診断書や、一部に出回っている記載内容に関する責任の所在も不明な有料の簡易英文診断書には注意しましょう。

海外で治療を受けた場合は、必ず退院時サマリーと会計証明書および領収書をもらいます。帰国後に、日本の主治医がフォローしますので、その手法や経過のサマリーは非常に重要です。そして、会計証明と領収書は、保険(海外旅行保険、クレジットカード保険など)の請求と、年度末の税金の控除に必要です。

常用薬は旅行期間プラス1週間分は持参するようにします

衛生状態の悪い国では下痢止めも必須

国内の慣れ親しんだ気温や食事、水などから、環境が一変する海外旅行では、普段健康な人であっても体調を崩しがちになります。

また、体調不良はドラッグストアが開いている日中に起こるとは限りません。真夜中では薬を入手するのが困難な場合もあります。旅の目的地や出発前の健康状態に関係なく、痛み止め、風邪薬、整腸剤の3種類の薬は必ず持参しましょう。

痛み止め(鎮痛剤)は頭痛、歯痛、生理痛に効きます。市販の痛み止めのなかではアスピリンやアセトアミノフェンが代表的な薬です。ほとんどの痛み止めにはげ熱作用があるため、発熱時にもこれで対処できます。

喉も痛みを軽減したり、熱を下げる効果を期待して、風邪薬としても利用できるため重宝します。飲みなれた薬を5〜6錠ほど持参しましょう。市販薬よりも処方薬のほうが効果が高いので、ロキソニン錠やボルタレン錠があれば、そちらを持っていきます。

風邪薬も気温の変化で風邪を引く旅行者が多いので、使用頻度は高くなっています。また飛行機内は湿度が5〜15%と大変乾燥していますので、風を引きやすい状態に長時間いることになります。

痛み止めと同様、市販薬でもPL顆粒などの処方薬でもどちらでも構いません。飲みなれたものを5〜6回分用意しましょう。一般的に風邪薬は、いわゆる抗ヒスタミン剤が多く含まれ、鼻水などを改善するためのものです。

痛み止めと風邪薬は、数週間の長旅であっても、旅行期間中ずっと服用するものではありません。持参した以上の量が必要な場合は、なんらかの病気にかかっていることが考えられますので、病院で診察を受けたほうがよいでしょう。

海外旅行では普段とは違った食べ物や水を口にする機会が多いため、下痢あるいは便秘になる人が少なくありません。衛生状態の悪い東南アジアや中南米ばかりでなく、欧米でもお腹を壊しやすいので整腸剤は必須です。

乳酸菌製剤のパンラクミン(三共)などは、腸内の善玉菌を強化するプロバイオティクスの効果があり、初日から毎日少しずつ服用しておくと、下痢と便秘の両方に効果があります。予防のために服用する場合は、通常服用量の半分程度が適量です。

以上の3種類はどんな旅行にも携帯すべき薬剤です。これらに加えて、それぞれの持病や体質に対処する薬が必要です。高血圧症の人は普段から飲んでいる降圧薬、アレルギー体質の人はその対処薬、胃の弱い人は胃薬、といった具合に個々の必要性にあわせた薬を、旅行期間プラス1週間分ほど持参しましょう。