海外旅行前に知っておきたい医療情報

十分な睡眠、適度な食事、自己暗示、1時間前の服薬が乗り物酔いには重要です

定番はトラベルミンなどの市販薬

海外旅行では、飛行機や船、鉄道、バスなどを利用する機会が必ずありますが、乗り物酔いがあるために旅を十分に楽しめない方も少なくありません。

乗り物酔いには「動揺病」という名称もあり一種の病気となります。人間の体には個人差がありますが、乗り物の揺れに対する限界点を持っています。それを超えると自律神経に支障をきたし、眩暈、吐き気、顔面蒼白などの症状を引き起こし乗り物酔いとなります。

自律神経の変調や乱れの程度は人それぞれですが、誰にでも起こりえるものです。普段は乗り物酔いとは無縁の人では、旅行前日に徹夜をしたりすると、乗り物酔いになる可能性は高くなります。

乗り物酔いには脳へのバランスが大きく影響していますが、そのバランスにブレーキがかかりすぎても、かからなすぎてもいけません。そのバランスを左右するのが、内耳、眼、自律神経、深部知覚、前庭小脳です。

なかでも重要なのは、平衡感覚の調整を担っている小脳の一部である前庭小脳の働きです。小脳は内耳や目などの各部からの情報が集まるため、その情報を上手に調整できないと自律神経がバランスを崩し、その結果として、眩暈、吐き気、頭痛などの症状、すなわち乗り物酔いが起こるのです。

乗り物酔い対策には大きく分けて、心と体と環境への配慮など3つのアプローチがあります。乗り物酔いしやすい人は、飛行機や船、バスなどに乗る前から既に心が乱れよってしまっており、体も緊張と不安のあまり不安定で、周囲の環境も良くないことが多いからです。

まず、自分は酔わないと自己暗示を掛けましょう。この際、周りの人も「あなたは酔いやすいから注意して」などと必要以上に話題にするのはタブーです。乗り物の中ではあごを軽く引き、進行方向を見るようにしましょう。深く腰掛け、なるべく遠くの動きが少ない景色を眺めるとよいでしょう。また、乗り物の動きに合わせて自分の体も動かすようにすれば更に酔いにくくなります。

十分な睡眠と、バランスの取れた食事も重要です。もともと乗り物酔いになりにくい人でも、徹夜や偏った食事内容を繰り返していると、体のバランスが上手くとれず、乗り物に乗った際に引き金となって気分が悪くなったり、頭痛などを引き起こすことが予想されます。満腹、空腹の状態で載るのではなく、適度な状態が一番理想的です。

生姜(しょうが)に含まれるジンゲロールという辛味成分には、血流を促進して平衡機能の乱れをおさえ、眩暈などの症状をやわらげる効果があるとされています。また、ペパーミントの香りも吐き気を緩和する効果が期待できます。

大人ならば少量のアルコールは気分を和らげ、前庭小脳の働きを適度に鈍らせる効果がありますが、飲みすぎは逆効果となります。服装は体を締め付けるようなものはやめましょう。

酔い止めは、成分や剤形(カプセル・内服・チュアブル錠)を確認して、自分に合うものを選ぶ

水なしで飲めるチュアブルタイプも登場

乗り物酔いの予防薬(酔い止め)は、精神神経薬の一種です。乗り物酔いとは、車や船などに乗ったときに、振動などで体が不規則に揺られると、内耳にある平衡感覚器官の三半規管が繰り返し刺激されて、脳の副交感神経(自律神経の一つ)の嘔吐中枢が以上に刺激された状態です。三半規管と視覚がバラバラになり、その結果として吐き気やめまいが起こります。

しかし、眠ると脳の活動は低下して感覚の混乱が鎮まるので、薬で脳を半分眠った状態にするのが乗り物酔いの予防薬です。この働きをするのが、自律神経の働きを抑える抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン成分を含むものとしては、トラベルミンR(エーザイ)、センパアS(大正製薬)、アネロン内服薬(エスエス製薬)があります。

乗り物酔いのもう一つの成分は、鎮痙成分の臭化水素酸スコポラミンと呼ばれるものです。上記の抗ヒスタミン成分の塩酸メクジレンとこの臭化水素酸スコポラミンの療法を配合したものには、エアミットサットF(佐藤製薬)、タケダ乗り物酔い止め(武田薬品)などがあります。

また、抗ヒスタミン成分のサリチル酸ジファンヒドラミンと中枢神経抑制成分のジプロフィリンを配合したものには、トラベルミン(エーザイ)、マイトラベル錠(興和薬品)があります。

このように乗り物酔い予防薬の成分には様々なものがありますが、その剤形(カプセル剤・内服液・水なしで飲めるチュアブル錠)も異なり、剤形によって薬効の持続時間も異なります。医師や薬剤師に相談して、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。

酔い止めは、薬の有効成分の血中濃度を上げておくために、乗車・乗船・飛行機の搭乗の30分前に使用するのが原則です。安易に使用したり、連用しないことが大切です。