海外旅行前に知っておきたい医療情報

航空機内における長時間の座位で血流が停滞し、血栓が肺の血管につまる病気

対策はこまめな水分補給

航空機内で長時間(6時間以上)にわたって座位を続けた結果、血流が滞り、下肢の筋肉内の静脈に血栓が生じ、それが心臓を経て肺動脈に詰まって、呼吸困難や失神、死亡を引き起こす疾患が、ロングフライト血栓症(旧名:エコノミークラス症候群)です。

日本は、北米各都市、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドなどの人気旅行先の各国には、片道10〜12時間、往復20〜24時間の長時間飛行となり、南米やアフリカへは、往復40時間以上の「超」長時間飛行になります。

旧称である「エコノミークラス症候群」は、その名称から座席スペースが狭いエコノミークラスのみが危険で、ビジネスクラスやファーストクラスは安全だという誤解を与えかねず、この疾患の理解が得られにくいとして、日本旅行医学会が中心となって改称提言が行われました。その結果、現在は医学会だけではなく、広く社会にも受け入れられており、海外でもこの改称に追随する動きがあります。

主たる原因は、6時間以上の座位を強いられ、下肢の静脈血にうっ血が生じることにあります。加えて脱水と、若者ではスポーツなどでの下肢の血管内膜への外傷、中高年では下肢の血管内膜の劣化が関与しています。

予防策としては、@2〜3時間ごとに体を動かす(少し離れたトイレに行く、下肢の屈伸運動をする)、A座席に座ったまま、踵やつま先の上下運動と腹式呼吸を1時間毎に行う、B水分を摂る、Cゆったりとした服装(ベルトを緩める)、D決行を悪化させるので足は組まない、E不自然な姿勢で寝てしまうので、睡眠薬は使用しない、F高齢者は通路側の座席を取る、などが挙げられます。

ロングフライト血栓症の診断には肺動脈の造影CTが適しています。長時間同じ姿勢を余儀なくされた状態(飛行機、車、病院のベッドなど)から急に立ち上がるなどの負荷をかけたときに起こる呼吸困難、胸痛などの症状から肺塞栓症が疑われたときに行います。

検査する部位は当然、まずは肺動脈になりますが、肺動脈血栓のほとんどは下肢静脈内でできた血栓が肺動脈に流されたものであるので下肢静脈に血栓が残存しているかどうか調べることもその後の治療に重要となります。

肺動脈内の血栓の有無を知りたいときにはCTが最も感受性、特異性が高く、数十秒で胸から大腿部までの断面撮影が可能であることから、大腿部に血栓が残存するかどうかまで分かります。